調停委員は,社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ,原則として40歳以上70歳未満の人の中から,弁護士,司法書士や行政書士など法律の専門家,医師,大学教授,公認会計士,不動産鑑定士,建築士,地域社会に密着して幅広く活動してきた学校の校長・教頭,地域の有識者・名士などから選ばれます。
弁護士など法律の専門家が担当する場合もありますが,むしろ調停委員の多くは法律の素人です。それでも調停委員という立場で日々研鑽を重ねています。
家事調停は夫婦・親族間の問題であるため,通常男女1人ずつ調停委員が指定されます。
調停委員は,非常勤の裁判所職員として,手当や旅費日当が支給されます(民事調停法第9条,家事審判法第22条の3)。
調停委員は,中立的立場で,当事者の話を入れ替わりに聞いて相手方に伝えて,両者の意見調整を図りながら,合意を形成して紛争を解決するという任務を負っています。調停委員の第一次的任務は紛争を解決することにあります。
元々裁判所の任務は,社会に生起する多数の紛争を解決して社会秩序を維持することにあります。当事者の権利や利益保護は裁判所にとっては二次的な任務に過ぎず,それらは本来弁護士の任務です。
そのことは調停を経験してみるとただちに理解できます。調停委員は,とかく説得しやすい当事者の方を説得してきます。はっきりと主張して意見を譲らない当事者より,おとなしい当事者の方を説得してきます。また,一方にしか弁護士がついていない場合,弁護士のついていない当事者の方を説得してきます。なぜなら専門家の弁護士を説得するのはとても大変だからです。法律の素人である当事者を説得する方が遙かに簡単で早く解決します。仮に弁護士が無理難題を吹っかけている場合でも調停委員は弁護士に反駁することはあまりなく,法律に疎い素人当事者の方を説得してきます。これは裁判所の任務が当事者の権利保護よりも,紛争解決の方にウェイトがあるからです。
このような経験をすると,当事者は裁判所に不信感を抱くようになります。調停委員に対する当事者の不満は,インターネットを検索するとたくさん出てきます。
裁判官や調停委員が相手の言い分ばかり聞いて自分の言うことを聞いてくれない,裁判官や調停委員が自分の納得できない解決策を押しつけてくる,このような体験をしたとき,皆さんは弁護士を頼むかどうか悩むことになるのでしょう。そんなとき,お気軽にご相談下さい。
離婚するきっかけとなるのは夫婦の性格の不一致です。夫婦の考え方がお互いに違う,夫婦喧嘩をよくする,夫とは口をきかないなど。
しかし調停や本裁判で離婚を争っている場合、「性格の不一致」は証明されたようなものです。なぜならお互いの考え方が異なるから裁判になっているわけですから、夫婦間の考え方に違いがあること=「性格の不一致」は、裁判をしていること自体で証明されているようなものだからです。
ただ、それだけでは、離婚は認められません。「性格の不一致」が、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するためには、次のような要件が必要です。「性格の不一致」が認められるというだけで離婚が認められるケースは少なく、そういう場合は別居が始まるのが通例であり、要は、別居期間がどれくらいになれば、離婚が認められるかという問題に還元されるケースが多いです。
それでは何年くらい別居したら,右に該当するようになるのでしょうか。
別居期間が何年かについては,学説上は5年説が多数説のようです。法制審議会の民法改正答申も5年説に立っています。しかしそれに則った民法の改正はまだなされてはおらず,現在別居期間を定めた法律もありませんので,裁判例を検討するしかありません。
裁判では,別居期間の長さ以外に,別居の理由,夫婦間の会話・性行為の有無,夫婦喧嘩の内容程度,夫婦関係を改善する意思や努力の有無,未成熟子の有無などの諸事情が総合的に判断されて「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当てはまるかどうか決められています。右総合的判断の結果として,別居期間3年前後で離婚を認める裁判例があります。
さらに和解からの私の経験的感覚ですが,別居期間が2年くらいになると,裁判官は離婚もやむなしとして,離婚を打診してくるケースが多々あります。なぜなら2年間も夫婦が何らの接触もなく別々の生活をしているケースでは,夫婦の修復は難しいと判断されるからです。よって,2年くらいの別居期間が見込まれる案件は,訴訟を開始してもよいと思われます。ということは,相談時別居が開始されている案件なら,その後の調停と訴訟とで2年近くは経過しますから,諦めないで裁判を検討する価値があるということになります。
以下項を改めてそれらを検討します。
以上をまとめてみると,以下のようになります。
だから「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する。
といったところでしょう。
離婚事件を得意とする弁護士は意外と少ないです。弁護士の多くは「離婚などの家裁事件はあまり受けたくない」と言います。なぜでしょうか。例をあげて説明してみます。【弁護士】コラムでも同じようなことを書きましたので,ここでは少し視点を変えて書いてみます。
熟年夫婦裁判離婚期日での出来事です。依頼者は2回に渡って申し立てられた調停を一度も出廷しなかっため調停は何れも不調となりました。そうしたら3度目には離婚の本裁判を訴えられました。60代半ばの専業主婦の彼女曰く「私の老後はどうなるの?! 離婚させられたら私は路頭に迷ってしまう」の一点張りで,相手方の気持ちを全く考えようとはしていません。と言うか,彼女は不安ばかりが先に立って,冷静に現状把握が出来ないでいるのでした。
こういう依頼者に,現実に目を開かせ,冷静に相手の意向(本件では,夫は「復縁などあり得ない!絶対にイヤ。こども達が成人するまで待っていたのだ」と言っておりました)を理解させるのはとても難しいことなのです。本来裁判は事実と論理(理屈)から成り立っており,基本的には事実を踏まえた理屈をしっかりと主張展開していけば解決に向かうのが筋なのですが,家裁案件では,当事者の感情論に引きずられぱなしです。説得しても説得しても相変わらず依頼者は自分のことは棚に上げて,相手に対する不満ばかり訴えてきます。この繰り返しに,弁護士は嫌気がさしてしまうのです。
しかし,私は,組んずほぐれつ,ぐちゃぐちゃに絡まっている感情の糸を,ほぐしつつ解決していく案件が好きで,感情的に絡まった事案の解決を得意としております。そのためには,依頼者の話をじっくりと聞く必要があります。
ここで大切なことは,裁判では自分の意見をしっかり伝えることはもちろんですが,それ以上に相手方がどう考えているのか,特に裁判所が事案をどのように捕らえているかを的確に判断しながら,反論・意見を出すことが大切です。裁判官が事案をどう捕らえているのか見据えて行動しないと,最後に予想外の結論=敗訴の結論をたたきつけられることもあります。しかし法律に詳しくない依頼者には,その判断はなかなか容易ではありません。ここに弁護士に依頼する必要が出てくるのです。
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<HP更新履歴>
2011.H23. 4 静岡市で【HP】開設
2013.H25. 5 札幌弁護士会に登録替
2016.H28. 7 再び静岡県弁護士会へ
2017.H29. 5【HP】リニューアル
2017.H29. 9 弁護士ドットコム
2021.R3 東京第二弁護士会に登録変更予定