最近結構多いのは,不倫したことによる慰謝料請求事件です。
不倫をした夫婦間の慰謝料請求と,不倫の相手方に対する慰謝料請求とに分けて検討します。
- 夫婦間の慰謝料請求
民法は貞操義務を規定していませんが,貞操義務違反は離婚原因を構成し,不法行為を成立させます。
(1)夫婦の同居の期間,不倫をした者の有責性・不倫した期間・資産収入・社会的地位,浮気された者の年齢・苦痛の程度,財産分与の有無,未成熟子の有無などを基準にします。
(2)金額は,①同居12年別居36年で1500万円,②同居38年別居17年で1000万円という高額の慰謝料を認めたケースもありますが,これは加害者が高収入だったからだと言ってよいでしょう。
一般的には500万円を越えることは稀です。ちょっと古いデータですが,昭和55年~平成元年に,東京地裁が慰謝料請求を認めた約200件の裁判例の平均慰謝料額は190万円でした。そのうちの8割は400万円以下でした。
まあ100万円~300万円程度が相場と言えるのではないでしょうか。
- 不倫の相手方に対する慰謝料請求
(1)金額の算定には,不倫関係を主導した者か,不倫相手の年齢・資力・社会的地位・不倫していた期間,夫婦関係が不倫により破綻されたか離婚となったか,不倫関係は解消しているか,不貞以前に請求者側の夫婦関係が不和になっており,そのことについて請求者には落ち度がなかったか等が,考慮されます。
(2)金額は100万円~500万円程度です。女性に対する請求よりも,不倫男性に対する請求の方が,高くなる傾向があります。それは男性が不倫の主導的役割を果たしているケースが多いこと,一般的に男性の方が資力があること,女性が非婚で子供をもうけて生活にも困っているケースがあるからだとされています。
(3)有名な判決例として,「婚姻関係がすでに破綻している場合には,不倫をしても,家庭生活の平穏を違法に侵害したことにはならない」として,慰謝料請求を否定した最高裁判所があります(最高裁判所平成8年3月26日の判決)。つまり夫婦関係が破綻していれば,浮気をしても許されるのだと言わんばかりの判決です。
ここでは「婚姻関係が破綻しているか」どうかが焦点となります。婚姻関係が破綻したと言えるためには,少なくとも相当な期間,別居していたことが必要だと解されています。ところが,この裁判例は,別居して3ヶ月目には早くも不倫を始めており,果たして別居期間3ヶ月で夫婦関係が破綻していると言えるかは疑問との批判があります。 - (婚姻関係破綻後の不倫と慰謝料請求) 有名な判例として,「婚姻関係がすでに破綻している場合には,不倫をしても,家庭生活の平穏を違法に侵害したことにはならない」として,慰謝料請求を否定した最高裁判所があります(最高裁判所平成8年3月26日の判決)。
ここでは「婚姻関係が破綻しているか」どうかが焦点となります。婚姻関係が破綻したと言えるためには,相当程度の期間別居していたことが必要、あるいは別居していなくとも双方が離婚の意思を有し離婚条件を具体的に詰めているような状態にあることが必要でしょう。単に夫婦関係が冷えているとか、寝室を別にしている程度では婚姻破綻とは言えません。この裁判例は,別居して3ヶ月目には早くも不倫を始めており,果たして別居期間3ヶ月で夫婦関係が破綻していると言えるかは疑問との批判があります。
不倫相手から「夫婦関係はとっくの昔に夫婦関係は破綻している。安心して付き合って欲しい」と不倫に誘われた場合でも、そう信じることに過失がある場合には、慰謝料支払い義務が生じるので注意が必要です。単に男の言葉を信じただけではダメでしょうね。そういうわけで,ここを読まれた方は,最高裁判所の判決を自分に都合良く鵜呑みにされないようお気を付け下さい。